「めんそーれー」・・・沖縄に旅行に来たことがある方は、沖縄の観光地やショッピングモール、沖縄の市町村の境目の看板など、至る所でこの言葉を目にしたのではないでしょうか?沖縄では「はいさい」と並んで有名な方言ですね。
沖縄料理店などでもよく使われているので、沖縄に行ったことがない方でもおそらく聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。
至る所で使われているので、気軽な挨拶のような印象を受けますが、「めんそーれー」は実は日常ではあまり使われない言葉です。それでは本来は一体どんな意味が込められているのでしょうか?由来や使い方も含めて、解説していきましょう。
「めんそーれー」の意味と使い方を徹底解説
「めんそーれー」の由来は?
実はこの「めんそーれー」という言葉は、日常の会話で使われる言葉ではありません。語源は日本の古語「参り召しおわれ」「住み有り召しおわれ」に由来しています。意味は「来てください(いらしてください)」です。「めんせーん」が「来る」の敬語で、命令形が「めんそーり(=おいでなさい)」となり、それを柔らかくしたのが「めんそーれー」です。
沖縄には、日本本土では死語になってしまった日本祖語の古い言葉が今でも生きた言葉として脈打っています。沖縄方言の源流を辿ると日本の古語に辿り着きます。古来から受け継がれてきた神事やパワースポットが数多くある沖縄では、言葉の変化も緩やかで、神代に近き時代の言葉が残されたのでは、と推察されます。
「めんそーれー」の具体的な使い方、例文を解説
「めんそーれー」にはいろんな意味が含まれますが、ここでは「来てください(いらしてください)」の意味での例文を紹介します。
この項目では「めんそーれー」の具体的な使い方についてみていきましょう。
■先輩に会って家に誘うとき
「あとぅからめんそーりよー。」
(あとでうちにいらしてくださいね。)
■お客様を送り出すとき
「またん、めんそーれー。」
(また、来てください。)
沖縄の人は「めんそーれー」を使う?
「めんそーれー」は沖縄方言ではよく知られている言葉ですが、実は日常ではあまり使われていないそうです。「来てください」という意味としては、「めんそーれー」よりも「めんそーりよー」のほうが頻繁に使われます。そして、「めんそーれー」の最上級の敬語が「いめんそーれー」です。
元々「めんそーれー」は士族が使う言葉で、農村の人は「もーれー」「もーちゃんなー」「もーりよー」を使います。沖縄の方言は士族や商人が使う言葉と農民が使う言葉が違うのです。
今の若い人たちは「めんそーれー」は使わない
「めんそーれー」が日常で使われないことは理解していただけたと思います。
現在では「めんそーれー」は観光客を歓迎する際に使われる沖縄特有の表現で、観光地や空港、ホテル、レストラン、観光案内所などで出迎えや接客時に使われています。
元々は士族が目上の人に対して使う言葉なので、敬語に馴染みのない今の若い人は使いません。このことから「めんそーれー」が日常で使われないことは理解していただけたと思います。それなら、実際はどのようなときに「めんそーれー」が使われているのか?となりますよね。
「めんそーれー」を使う年代や地域
「めんそーれー」は士族が使う言葉であるため、元々は武士が多く住む城下町である首里がある那覇市で多く使われていました。使う人たちは年代というよりも、身分によって「めんそーれー」を使う人と使わない人がいるようです。そして、今の沖縄の若い人たちは方言をほとんど話しません。
このことから、観光客を歓迎するキャッチフレーズとしてではなく、純粋な「来てください」の意味で使っているのは70代以上の武家出身の家庭の人といえるでしょう。
「めんそーれー」が使われている映画やドラマの タイトルやシーン
ーアニメ『でーじミーツガール』ー

でーじミーツガール1話より引用
こちらは沖縄が舞台のアニメ、でーじミーツガールです。高校生の主人公は両親がホテルを営んでいて、夏休みにホテルのフロントで家業を手伝っています。このシーンでもやはり、チェックインのお客さんに「めんそーれー」と出迎えていますね。
沖縄が舞台のドラマやアニメ、映画は多数ありましたが、「めんそーれー」が使われているシーンを見つけることができたのはこちらのアニメだけです。こんなにも至る所で「めんそーれー」の看板を見かける沖縄ですが、やはり日常的には使われない言葉なのだな、と実感しました。
「めんそーれー」は店名などにも使われている
「めんそーれー」は有名な単語ですから、いろいろな場所で使われています。ここからは、お店や、お土産などに使われている「めんそーれー」をみていきましょう。
お店の名前で使われている事例

「郷土料理めんそーれ」
こちらのお店は那覇市久米にある沖縄郷土料理のお店です。沖縄県内でも滅多に出回らない珍品も多く取り揃えており、中でもミソがたっぷりと入った希少なヤシガニや、高級食材と言われているセミエビが食べられることで有名です。
定番の沖縄料理や泡盛も豊富に揃っており、ハブ酒や古酒などの希少なお酒もあります。沖縄旅行の際には、ぜひ訪れてみたいお店です。
お店のホームページのURLを下に貼っておきますので、興味があればご覧ください。
他にも、北谷町にMENSO-REという店名のカフェがあったり、那覇市松山に「めんそーれ」というスナックやバーがあったり、恩納村にも「めんそーれ」という店名のダイビングショップがあったり、「めんそーれ」という名前のお店が至る所にありました。
お土産で使われている事例


「首里城公園オリジナルTシャツ」¥3,410(税込)
シーサーの顔が描かれている首里城公園オリジナルのTシャツです。
手元には沖縄を代表する野菜のゴーヤーを持っており、裏面には「めんそーれ」とおもてなしの心で温かく迎え入れてくれるウェルカムンチュなシーサーも描かれています。
その他で使われている事例
しゃべる自販機
ダイドードリンコの「おしゃべり自販機」の沖縄方言バージョンが沖縄県内に設定されています。
お金を入れると:(女性の声で)めんそーれーたい
おつりが出ると:いっぺーにふぇーでーびる。お釣りわしんみそーんなよ(ありがとうございます。お釣りを忘れないでください)。
と言ってくれます。
コンビニATMの音声案内
ファミリーマートのATM、私もよく利用します。
「取引開始」ボタンを押すと:はいたーい、めんそーれ!
取引が終わると:にふぇーでーびる まためんそーりよ!(ありがとうございます。またいらしてくださいね!)
と女性の声ではつらつと言ってくれます。
「めんそーれー」にまつわるエピソード
こちらでは、あなたのまちの郵便局主催、ラジオ沖縄・琉球新報社共催で平成9年1月1日から3月15日までの間に行われた「心に残る私のしまぐち」に寄せられたハガキから収録されたエピソードを紹介します。
親戚のおばあちゃんとの思い出エピソード
「今から三十五年程前、牧志の方に“牧志湯”と言う風呂屋がありました。私は中学のころ週に一度か二度、ふろを入りに行くと、必ず親戚の“うふあんまー(祖母)”に会うのです。とてもいやだったので、なるべく会わない様に行くんですが、いつもの通り“うふあんまー”がやってきて、私に向かって“いあーや、わんにんかい、めんそうちーたい でいらんなぁー(あんた、私に“おいでになっていたんですね”と挨拶もしないのか)”と口ぐせのように言われました。今、仏だんに手を合わす時、思い出します。」
那覇市 川村笑美子さんの投稿より
思春期の頃は、親戚に会うと「何か言われるのかなぁ~、嫌だなぁ」と思って、挨拶をするのも面倒くさくなるものですよね。当時はそう思って避けていたけど、お仏壇に手を合わせている今、「あぁ、あの時はもっとおばあちゃんと関わればよかったなぁ、おばあちゃん、ごめんね。」というお気持ちなのかもしれないですね。
懐かしく、ちょっとほろ苦いエピソードですね。
まとめ
沖縄の方言は、琉球王国として独自の歴史と文化を持つ沖縄の表現手段として伝えられてきました。
沖縄各地に伝承されてきた沖縄方言は、地域の伝統行事、祭り、料理、芸能などの沖縄固有の文化の礎であり、その文化を継承するうえで不可欠なものです。
しかし、沖縄の方言は2009年にユネスコ(国連教育科学文化機関)によって消滅の危機にある言語として認定されています。
この記事が沖縄方言が末永く受け継がれていく一助となることを願って、これからも沖縄の魅力を深く掘り下げて発信していきたいと思います。