みなさんこんにちは、今回は「沖縄方言には『おめでとう』相当する表現がない」というお話をします。
これにはただ言葉がないというだけではなく、沖縄の文化や考え方が深く関係しているのです。
代わりに沖縄方言には「ぐすーじさびら」という言葉があります。この言葉、一体どんな意味が込められているのでしょうか?由来や使い方も含めて、一緒に見ていきましょう。
「ぐすーじさびら」の意味は、由来、使い方を徹底解説
「ぐすーじさびら」の意味は「お祝いしましょう」です。
さきほど「おめでとう」がないとお伝えしましたが、一方的に言う「おめでとう」が沖縄方言にはないのです。
沖縄では人とのつながりを大切にすると言われますが「ぐすーじさびら」は大切な人と一緒に「お祝い」するのです。
そう、この「一緒」というのが今回のポイントでもあります。次からはもっとわかりやすく説明していきます。
ぐすーじさびらの意味、由来は?
「ぐすーじさびら」は以下のように分解できます。
- 「ぐ」 :敬意を表す接頭語で、日本語の「ご」に相当します
- 「すーじ」:「祝事」または「祝儀」を意味する名詞です。日本語の 「お祝い」に相当します。
- 「さびら」:動詞「する」の意味を持つ「すん」の意思形です。「〜しましょう」という意味を表します。
これらの要素を組み合わせて、「ぐすーじさびら」は直訳で「お祝いしましょう」となります。
この表現は沖縄方言に「おめでとう」に相当する直接的な言葉がないため、祝福の意を伝えるために使われます。
「生きていることを祝う」という深い意味も含んでおり。単なる祝福以上の意味を持つ言葉です。
次の項目からは具体的な使用例をご紹介していきます。
ぐすーじさびらの具体的な使い方を解説
「ぐすーじさびら」の使い方
A:友達が、昇進したんだって
(友達が昇進したんだって)
B:そうなん?じゃあ、昇進ぐすーじさびら!
(そうなの?じゃあ、昇進おめでとう!)
生きていることへの感謝
この「ぐすーじさびら」は生きていることそのものを祝福する意味も含んでいます。
第二次世界大戦後、故・故照屋林助さんが「ぐすーじさびら」という言葉を広めたと言われております。この言葉には、戦争を乗り越えた沖縄の人々の「生きていることへの感謝」の思いが深く込められています。
このエピソードについては、後ほど詳しくご紹介しますが、「ぐすーじさびら」という言葉が持つ温かい意味を感じていただければと思います。
沖縄の若い人は「ぐすーじさびら」を使う?
沖縄の若い人たちは「ぐすーじさびら」を使うのでしょうか?
実はあまり使われていません。「ぐすーじさびら」はもともと伝統的な文脈や特別な祝福の場面で使用される言葉ですが、現在では若者に限らず沖縄の人々全体で使用頻度が低い表現となっています。
しかし、伝統を重んじる場面や特別な機会では、今もなお大切にされている言葉です。
今の若い人は「ぐすーじさびら」を使わない
今の若い人たちは、日常会話で「ぐすーじさびら」を使うことは殆どありません。
これは、現代ではこの言葉が特定の場面でのみ使用されるためです。では、「ぐすーじさびら」をどのような場面で使うのでしょうか?以下に主な例を挙げてみます。
■主な使用場面の例
・結婚式
・卒業式
・昇進祝い
・生命の尊さを強調したいとき
このように「ぐすーじさびら」は特別な場面で使われる言葉です。頻繁に使用されるわけではありませんが、沖縄の伝統や文化の中で今も大切に受け継がれており、全く使われないというわけではないのです。
「ぐすーじさびら」を使う場面はいつ?どんなとき?
「ぐすーじさびら」を使う場面はいつ、どんなときでしょうか?
すでに紹介したように、「ぐすーじさびら」は結婚式や卒業式などの特別な場面で使われる言葉です。
しかし、この言葉が持つ深い意味を考えると、人生で使う機会があまりなさそうな場面についても話したくなります。
「ぐすーじさびら」は単なる祝福の言葉ではありません。この言葉には、「命あることを祝い、亡くなった人を悼みつつ、勇気を持って未来へ進んでいこう」という願いが込められています。
日本では、このような場面に直面することが少ないかもしれません。平和な日常の中でも、命や未来を祝い、繋がりを大切にするという精神は、現代にこそ求められるものではないでしょうか。
「ぐすーじさびら」という言葉が、その象徴になるのかもしれません。
ぐすーじさびら」が使われている映画やドラマのタイトルやシーン
「ぐすーじさびら」に関するドラマのタイトルやシーンはありませんでした。
「ぐすーじさびら」に関する新たな情報が入り次第更新いたします。
「ぐすーじさびら」は店名などにも使われている
沖縄方言は、可愛い響きや、柔らかい雰囲気からいろいろな場所で使われていることでも有名です。キーホルダーやお店の名前、看板などいろいろなところで使われているので探してみると楽しいかもしれません。
「ぐすーじさびら」が使われている事例
「ぐすーじさびら」が使われている事例はありませんでした。
「ぐすーじさびら」に関する新たな情報が入り次第更新いたします。
「ぐすーじさびら」にまつわるエピソード
NHKアーカイブスより引用https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=D0009072341_00000
この言葉には、生きていることの喜びや命の繋がりを祝福する、素晴らしい意味が込められています。
沖縄の人々が「ぐすーじさびら(一緒に祝いましょう)」という言葉に込めた思い。
それが一人ではなく「一緒」である理由は、長い歴史の中で受け継がれてきた絆や助け合いの精神に根ざしているのではないでしょうか。
ここでは、この言葉を広めた照屋林助さんのエピソードをご紹介していきましょう。
「ぐすーじさびら」という言葉を広めたエピソード
■照屋林助さんのお話
照屋林助さんは、沖縄の音楽や芸能の世界で大きな影響を与えた人物です。彼は、90年代にメジャーデビューを果たした『りんけんバンド』のリーダー・照屋林賢さんのおじいさんにあたります。
時代は戦後の沖縄。多くの命が失われ、社会全体が深い悲しみに包まれ、人々は意気消沈していました。そんな中、照屋林助さんは沖縄漫談の始祖・小那覇舞天(おなはぶーてん)に師事し、三線を持って家々を巡りながら「ちぬぐすーじさびら(命のお祝いをしましょう)」と歌い続けました。
「ちぬぐすーじさびら」という言葉には、生きていることへの感謝、亡くなった人々への追悼、そして未来への希望と勇気が込められています。
照屋さんはこう考えていました。
「生き残った命をお祝いして元気を取り戻さないと、亡くなった人たちも浮かばれないし、沖縄の復興も進まない。さあ、遊ぼうじゃないか。」
この行動は「不謹慎だ」と非難されることもありましたが、結果的に人々に笑いや希望を届け、沖縄の復興に大きく貢献しました。
照屋林助さんの活動は、「ぐすーじさびら」という言葉が持つ深い意味を多くの人々に伝えるきっかけとなったのです。
まとめ
以上、今回は「ぐすーじさびら」についてお話しました。沖縄方言は、人々のつながりや絆を大切にしてきた文化を反映しており、コロナ禍を乗り越えた今も、その精神が息づいています。
戦争や想像を超える悲しみにつつまれても、「一人ではない、一緒に歩いていこう」と励まし合う姿勢には、深い感動を覚えます。
一方で、『沖縄方言は絶滅の危機にある』という指摘もあります。しかし、このような素晴らしい言葉や文化は後世に引き継がれていくべきだと感じます。
沖縄県では沖縄方言を守るためのさまざまな取り組みが行われています。この機会に私達も沖縄方言について学び、その魅力を次の世代へと伝えていきたいと思います。